中村文則さんの「R帝国」を読んだ。
(内容に関する記述があります。)
舞台は「R帝国」という架空の世界なのだけど、現在の日本のちょっと先の未来を描いているように感じた。
表面上は民主主義になっているが、実際は独裁政権になっていて、国民もそれをよしとしている。中には反発している人もいるが、少しでも意思表明すると、叩かれる。
「叩かれる」というのがすごくリアルで、今のネットでのやり取りを思い起こされる。
小説内では戦争が起きている。多くの国民は戦争に賛成している。もしくは自分は関係ない(自分が死ぬことはない)と思っている。
戦争というのも、ほとんどが機械が行なっているので、現実味がないのかも。
そこで、「戦争反対!」と言おうものなら、
え? お前反対なの? 国が負けたら責任とれるの?
そんなこと言うのは国民じゃない。スパイなんじゃね?
国民じゃないなら、何してもいいよね。国に帰れ!
このような感じで、責め立てられる。名前も顔もわからない、匿名の大勢に。
最終的には、住所などの個人情報まで明らかにされて、生活していくのが難しくなる。
そこまでしたら、警察に逮捕されそうなものだけど、国は動かない。
なぜなら、戦争反対派はじゃまだから。
注意くらいはするだろうけど、実際に行動をやめさせることはない。
そして、政府や世論(とされているもの)に反対するもの、少数派のものは弾圧されていく。
多様性が失われていく。
さらに国を牛耳っている政府のトップは、もはやまともな人としての感情を持ち合わせていない。国民を「道具」として見ている。
自分達の思い通りに動かすために、国民をバカにし(自分で考えられる人を排除し)、抹殺する。
さらには自分たちの国であるR帝国が戦争に負けようが、滅びようがどうでもいいと考えている。
本当に怖い世界だと思った。
今の日本にも当てはまることがところどころに散りばめられていて、「日本の将来のうち、いくつかあるうちの一つ」と思えた。
少なくとも、「R帝国」という本が発売されて、多くの人の心を揺さぶった現在では、R帝国のようになる未来は少ないだろうと思う。
(もしR帝国なら、このような内容の本は禁止されるはずだから)
共に生きましょう。